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JEWEL

JEWEL

悪魔の子 1

海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。

鐘の音が、高らかに鳴り響いた。

白亜の大聖堂から出て来たのは、神の前で愛の誓いを交わし合った新郎新婦だった。

「おめでとう!」
「お幸せに~!」
周囲の人々から祝福された彼らは、一台の馬車に乗り込もうとした時、数発の銃弾をそれぞれ額と胸に受け絶命した。
「敵だ~、逃げろ~!」
絶命した新郎新婦を見てパニックになった結婚式の参列者達は蜘蛛の子を散らすかのように逃げ惑っていたが、彼らも銃弾の雨を浴びて絶命した。
全てが終わった時、美しく澄み切った空を黒雲が覆い、雷鳴が轟いた。
土砂降りの雨は、惨劇の場となった血の海を全て洗い流していった。
『結婚式の惨劇』という大きなタイトルの下に、血の海の中で絶命している新郎新婦の姿を見たジェフリー=ロックフォードは、無言で新聞をゴミ箱へと投げ捨てた。
「ジェフリー、俺だ、入るぞ?」
「ナイジェル。」
「顔色が少し悪いな、どうしたんだ?」
「何でもない。」
ジェフリーはそう言って平静さを装ったが、長年彼と苦楽を共にしてきたナイジェルの目は誤魔化されなかった。
「この記事を読んだ所為で、昔の事を思い出したのか?」
「まぁ、そんなところだ。」
「サー・フランシス・ドレイクから呼び出しがあった。10分で支度をしろ。」
「わかった。」
ジェフリーはのろのろとした動きでベッドから出ると、身支度を済ませて寝室から出た。
「一体、俺が休職している間に何があったんだ?」
「さぁな。だが、わざわざお前を呼び出したのは、この国に“何か”があった時だ。」
「そうか。折角のんびりと家で過ごそうと思っていたのに、残念だな。」
ジェフリーはそう言うと、サングラスを掛けてナイジェルが運転するジープの助手席へと飛び乗った。
「休職中のところを呼び出して済まないな、ジェフリー。」
「いいえ、暇を持て余していたので、丁度良かったです。」
「そうか。」
ドレイクはジェフリーに微笑むと、一枚の写真を彼に見せた。
「お前達には、ある任務を与える。カスティア大陸に潜入し、“悪魔の子”を救出せよ。」
「“悪魔の子”?」
「あぁ、カスティア大陸には、男女両方の性を持った者が稀に生まれ、その者は人々からの信仰の対象になるという。だが、その希少価値の高さ故に、犯罪組織から狙われる。」
「つまり、俺達に“悪魔の子”を保護しろと?」
「まぁ、そういう事だ。」
「わかりました。いつカスティア大陸へ発てばよろしいのですか?」
「明朝5時に出発だ。」
ドレイク邸を出たジェフリーは、溜息を吐いた。
「あの人の言う事は、無茶苦茶だな。」
「まぁ、そんな事を言ってもお前なら大丈夫だと、あの人は信じているんだろう。」
「そうかもな。さてと、家に帰ったら早速荷造りでもするか。」
「出発が早いから、余り飲み過ぎるなよ。」
「わかっているよ。」
だがジェフリーはナイジェルの忠告を無視して朝まで酒を飲み、二日酔いに苦しみながらナイジェルと共にカスティア大陸へと向かった。
「おい、しっかりしろ、ジェフリー!」
「飛行機よりも船の方が良かったかな・・」
ジェフリーは、飛行機が苦手だった。
理由は今でもわからないが、何故が船に乗っていると心が安らぐのだ。
世が世なら、自分は海軍ではなく海賊として世界を股にかけて戦っていたのかもしれない。
「ジェフリー、着いたぞ。」
「そうか。」
ジェフリーが欠伸を噛み殺しながら飛行機から降りると、南国の風が彼の頬を優しく撫でた。
「暑いな。」
「ここは亜熱帯だからな。」
いつも隙なく軍服を着ているナイジェルは南国の暑さにやられたのか、ネクタイを緩めた後溜息を吐いた。
『グラハム様と、ロックフォード様ですね?初めまして、わたしはラオカイ、王の命によりあなた方をお迎えに参りました。』
空港から出た二人を出迎えたのは、褐色の肌をした男だった。
「良かった、移動する手間が省けたな。」
「あぁ。」
男が運転する車でジェフリー達が向かったのは、ドレイク邸よりも美しく豪華な白亜の宮殿だった。
『こちらへどうぞ。』
「へぇ~、豪華なものだな。」
宮殿の天井を飾る美しいステンドグラスを見上げながらジェフリーが廊下を歩いていると、彼は一人の少女とぶつかった。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
「あぁ。怪我は無かったか?」
「はい・・」
『カイト、何処に居るの!?』
少女はジェフリー達に向かって頭を下げると、そのまま宮殿の奥へと消えていった。
『さぁ、こちらへどうぞ。』
宮殿の奥の部屋には、数人の美女達を侍らせたカスティア国王・レオンが玉座に座りながら、ジェフリーとナイジェルを紫の瞳で冷たく見下ろしていた。
『金の髪・・そなた、獅子の神の化身か?』
「は?」


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